移動花びん屋さん『Cabin .e .dream』/ 恋するパリ通信

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ふだんはパリでファッション撮影にまつわるお仕事をしているのですが、その傍ら『Cabin .e .dream』という移動花びん屋さんを始めました。どこを旅しても必ずのぞく蚤の市、お気に入りのお花屋さんで週末に買う季節のお花、そのお花たちを生ける花びんを選ぶ楽しみ――ささやかな日常の中にある、私のお花と花びんにまつわる偏愛ストーリーを今回はお話しさせてください。

パリに住み出してうれしかったことのひとつは、お花を買うことが人々の何気ない日常にとけ込んでいること。決して特別なことではなく、パンを買うのと同じように、お花を買う感覚がパリには根付いているのです。

左:小規模な生産者を支援する野菜屋さんがパリでは流行。農家の方がお花も置いていくのか、たまに売られる田舎の花。 / 右:日常のご近所散歩でも季節のお花が気になる。ここは一軒家が並んでいる散歩が楽しいエリア。バラが満開。

だから、親しい人や自分のためにお花を買うことが、私の日常の普通になりました。春にはチューリップやライラック、シャクナゲ、夏から秋にかけてはポピーにひまわり、ダリアや秋紫陽花、冬になるとヒヤシンスやいろいろな種類のユーカリ。お花屋さんで季節のうつろいを知り、お花のリレーを楽しんでいます。

右:田舎からパリに持ち帰るブーケ。紫陽花とアニスのお花。アニスはこのままドライにするとお料理にもハーブティーにも。 / 左:大好きなお花屋さんKo Hana Fleurs ceramique。夏の終わり、秋スタートのひまわりとダリア。

そんな私が花びんにロックオンされたのはコロナ前。大好きなお花屋さん『Debeaulieu』のウィンドウで、一輪挿しのディスプレイが目にとまったことがきっかけでした。お店に入ってみると、飾ってあるお花と花びんを一緒に買えるというイベント中。そこでオブジェのような一輪挿しにひと目惚れし、持ち帰ったのです。それ以来、一輪挿しが大好きになり、週末に行われる蚤の市やブロカント、旅先でもコツコツ集めるようになりました。

大西洋の小さな湖の湖畔で行われたブロカント。バカンス中でも必ずパトロール。

集めるのは大きな花びんではなく、やっぱり一輪挿し。お気に入りの季節のお花を自分のために一本買って飾ることで、その週をがんばって乗り切れたり、お花を買えなかったとしても、お花なしでオブジェとして楽しめたり。例えばスーパーで買った料理用のハーブ一本を挿しても決まるような、オブジェのような一輪挿しが理想です。

左:私は花器になればいいので、花びんじゃないものにもアンテナを張ります。ガラクタ最高! / 左:エマウスという慈善・社会活動団体が主催するフリーマーケットのようなところにもチェックしにいきます。

花びんを集め出してからは、街を歩いていても庭先やベランダに咲いているお花を眺めたり、美術館でお花の静物画を見ては「こんな花びんに生けたいな」と想像したり、出合った花びんに合うお花、生けたいお花を毎日考え、すっかり花びんとお花のとりこになりました。

パリの泥棒市と呼ばれているアリーグル広場の蚤の市。月曜日以外は出ているので、近くに行く時には必ずチェック。

こうしてこつこつ蒐集しているうちに、私は移動花びん屋さんをいつかやりたいと夢見るように。いつものコーヒー屋さんや本屋さんなどで週末だけ数時間、花びんとお花を売っているスタンドがイメージです。買いそびれてしまったから「花びん屋さん出てたよね?」と次の日に行ってみると、そこはいつも通りのコーヒー屋さん、本屋さんだった、という幻のようなお店です。 

今回のバカンス中に集まってきたものたち。

そんなある日、アート系の品ぞろえで有名な本屋さんYvon Lambertを訪れた際、移動花びん屋さんをいつかここでやってみたいと話すと、「2日後のバレンタインデーにやってみたら?」と急に話が決まり、夢が実現することに!この初の移動花びん屋さんでは、初めて選んだ花びんに初めて選んだお花を生けてもらうことがコンセプト。花びんを買ってくれた人たちがワイワイ楽しそうにお花を選んでいく姿がとてもいとおしくて、「私はこういう笑顔が見たくて移動花びん屋をやりたかったんだな」と再認識しました。

本屋さんYvon Lambertで2年前初めて開いた移動花びん屋さん。お客さまに花びんを選んでもらい、初めての花びんに好きなお花を一本プレゼント。

思い返すと以前、雑誌の取材で「自分のために買ったお花をほほえましく思ったり、家族や好きな人の喜ぶ顔を思い浮かべたり、お花を買って帰る道すがらは、いつもなんとも言えないほどしあわせ。お花屋さんになったきっかけは、そんな喜びを贈れる仕事だからです」と話してくれた方がいたのですが、まさにその通り! 私自身も、お花を買った帰り道が今もいちばん好きなのです。いつか日本でも移動花びん屋ができたらいいなと夢見る毎日です。

TAKANAKA MASAE
雑誌や広告でファッションコーディネーター&スタイリストとして活動中。
パリに住んではや20年、毎日自転車でパリの街をパトロールしています。
Instagram 移動花瓶屋さん @cabin.e.dream

パリの日常 @massaetakanaka

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