物語のあるもの / いとしい手づくり

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物語のあるもの

使い込まれたがゆえの質感、鈍色や飴色……新品にはない存在感をまとった古いものに魅了され、それらを集めた店を始めて24年が経ちました。私が惹かれるのは、高級骨董ではなく暮らしに寄り添う日常品ばかり。「古くなることで魅力を失うのではなく、時を経るほど味わいと愛着が増すもの」をテーマに世界中から古道具を集めつづけてきました。

2001年の開店当初、そんなものを扱う店はまだ少なく「傷だらけのゴミを売る店」と鼻で笑われる日々でしたがやがてブロカント人気に火が付き、私の店にも全国から人々が訪ねてくるように。

同じころ、ヴィンテージ風の家具や雑貨をハンドメイドする人が増え、売り込みに来る人も多数いらっしゃいました。

意図的に古く見せる加工をしたものを眺めながら私がいつも感じていたのは、たっぷりと時間を経たものの美しさは容易につくれるものではないということ。古びてもなお人々を惹きつける力をたたえたものは明らかに別格で、私のなかで広い意味でのハンドメイドへの疑問を感じずにはいられなかった時期でした。

額装教室に通って仕上げた手づくり第一号。友人のルアーをきっかけに「ものが持つ物語」を額の中に封じ込める額装の魅力にハマりました。

そんなある日、わたしの手づくりに対する印象の変化が起きるできことに遭遇します。

それは友人が小学生のころに木を削り出して作った色とりどりのルアーたちを見せてもらった時のこと。40年以上も大切に保管されてきた作品の美しさや愛らしさに意外なほど感銘を受けたのでした。私はこれらを部屋に飾ってはどうかと提案し、その額装をやらせてほしいとお願いしました。これまでハンドメイドを毛嫌いしてた私の、それが手づくり第一号。作りながら気づいたのは「ただ古いだけでなく『物語のあるもの』に自分は魅了されていたのだ」ということ。手づくりの魅力にふれた貴重な経験でした。

 

kica 伊藤 泰子
グラフィックデザイナー、コピーライターを経て「古道具と喫茶とごはん『Kica(キカ)』」を設立。古道具のある暮らしを提案しつつ、店内の厨房にて調理をこなす日々。ライター。

Instagram:物販部門 @kica.jp、飲食部門 @kica.eats

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