
奥が深すぎる! 服飾パーツの世界

おしゃれの街・神戸には、ファッションをテーマにした日本初の公立美術館があります。そこに収められている古今東西のコレクションの中で、今回は「服飾パーツ」に注目。合成樹脂のない時代、いろいろな素材を使って工夫を凝らしたパーツの数々に、手づくり好きなら思わずときめくはず。時代も国も超えた手仕事の魅力を、たっぷりとご紹介します!
民族衣装のパーツをクローズアップ
神戸ファッション美術館ではさまざまな展示が行われていますが、今回お邪魔したのは、ドレスコレクション展「ザ・フェスティバル ︱世界のお祭りと舞踏衣装︱」(※現在は終了)。世界各地の民族が特別な晴れの日にまとった、伝統的な儀礼の衣装が展示されています。

それらの衣装に使われているパーツは、素朴なものから技巧的なものまで多種多様。中には「え、そんなものまで!?」という意外な素材も見られます。合成樹脂もミシンもなかった時代に生み出された、手仕事の細やかな技の数々は、思わずため息がもれるほど。次のページでは、学芸員の次六 尚子(じろく なおこ)さんの解説とともに、細やかな装飾パーツの魅力をひもときます。
伝統的に使われるパーツの素材
銀/シルバー

中国・貴州省の苗(シャオ)族は、銀を多用した装飾が特徴。動物をモチーフにした頭飾りや、大ぶりの首飾りが目を引きます。タイ北部のアカ族も銀細工の装飾を身に着ける風習があります。
(写真解説)儀礼に用いられる、鳥や馬などの立体パーツで作られた繊細で豪華な銀細工の頭飾り。
硬貨/コイン

富や繁栄の象徴であるコインも、服飾パーツとして多く使われます。タイ北部のアカ族では、銀の古銭を頭飾りや提げ袋にあしらい、グアテマラではネックレスにも用いられています。
(写真解説)「遊牧系民族では、財産を身に着けて持ち運ぶ意味もあったのでは」と次六さん。
吹きガラスビーズ

グアテマラの二連の首飾りは、吹きガラスに銀メッキをほどこしたビーズ製。ヨーロッパではよく見られますが、南米では珍しく、ファッションに敏感な女性が身に着けていたと考えられます。
(写真解説)ひとつずつ手吹きで作られたガラス玉は、形の不ぞろいさも手仕事ならでは。
貝

貝細工によく使われたのが、丸く光沢のあるタカラガイ。通貨の役割もあり、物々交換に用いられるほど貴重なものだったため、富や権力の象徴として王の装身具にも用いられました。
(写真解説)ベルトや腕飾りにタカラガイを使った、ザイール(現コンゴ民主共和国)のクバ王国の儀礼衣装。
石

天然の石に穴をあけてひもを通し、ビーズ状にして首飾りにしたもの。ブータンでは珊瑚やトルコ石などのほか、銀も用いられます。石を連ねて身に着ける習慣は、中国の仏教文化の影響ともいわれます。
(写真解説)ブータンの首飾りに使われている石のパーツ。ヒスイに似せたガラス玉が使われることも。
野豚の歯

フィリピンのミンダナオ島周辺に住む少数民族バゴボは、鈴や貝などのほか、動物の歯を装飾に使用。儀式や食用に飼育した豚を食べた後の歯を、パーツとして使用したものと考えられます。
(写真解説)上の楕円形のパーツも、おそらく豚のからだの一部。最後まで余すところなく使う知恵がうかがえます。
木の実

カメルーンの踊り手が足首につけるのは、ジュジュビーンズと呼ばれる豆。踊りながら楽器のように鳴らします。ザイール(現コンゴ民主共和国)でも王や男性の衣装の縁に、木の実の飾りが付けられます。
(写真解説)ジュジュビーンズはとても硬く、ふれ合うたび乾いた力強い音が響きます。
そのほか

民族によってさまざまな素材を使用していますが中にはこんなものも。
(写真解説)① 造花:ポーランド ② 人毛:カメルーン ③ イヌワシの羽根:ザイール ④ 象の毛:カメルーン
作り手の息遣いまで感じられる、手仕事好きにはたまらない世界。

神戸ファッション美術館は、ファッション都市・神戸のシンボルとして、平成9年(1997年)に開館。公立としては、ファッションをテーマにした日本初の施設です。
ロココ時代の優雅な宮廷衣装やナポレオンの大儀礼服の復元などヨーロッパを中心とした18・19世紀の衣装や、インドのマハラジャ衣装や韓国の婚礼衣装など世界各国の民族衣装や小物、そしてガブリエル・シャネルやクリスチャン・ディオールをはじめとする20世紀を代表するデザイナーのオートクチュールなど、ファッションに関する幅広いコレクションが収蔵されています。

手芸好きさんにおすすめなのは、服飾関連の衣装や資料を展示する「ドレスコレクション」展。多種多様な収蔵品を、ファッションを文化として捉えたさまざまな切り口で紹介しています。ポイントは、マネキンに着せて展示していること。ただ衣装を並べるのではなく、人々が着た姿を展示することを大切にし、「衣装の時代や種類に合わせて、マネキンも変えています」と次六さん。また、展示ケースに入れない露出展示を行っているので、近づいて細かい部分まで観察できるのも魅力です。今回の取材でも、苗族が小さなすず片を針に通してほどこした刺しゅうは、間近で見るとあまりの細やかさに驚愕。これをいつかの誰かが実際に手を動かして作っていたのだと思うと、一気に手づくり同志としての気持ちが近くなります。
また、展示と関連した内容で開催されるワークショップにも注目。今回はコレクション展に登場する首飾りを参考に、紙のビーズでネックレスやブレスレットを作るワークショップが開催されていました。

3階のライブラリーでは、国内外のファッション関連蔵書約4万冊に加え、雑誌や映像資料も閲覧可能です。ヴィヴィアン・ウエストウッドによる世界限定900部の直筆サイン入りのポートレート作品集などのレアな書籍のほか、『VOGUE』、『HARPER’S BAZAAR』、『LIFE』などモード誌のバックナンバーなど貴重な雑誌コレクションも充実。ほかの図書館では置いていないもの、ファッション美術館ならではの洋書、専門書などがそろえられ、研究にも使われる価値の高い資料となっています。
展示やワークショップ、ライブラリーと、ファッションを多角的に楽しめる神戸ファッション美術館。手づくりのヒントを見つけに、ぜひ足を運んでみてください。

神戸ファッション美術館
住所 :兵庫県神戸市東灘区向洋町中2-9-1
開館時間 :10:00 ー 18:00
最終入館は17時30分まで
休館日 :月曜日(祝日の場合翌平日)
コラボレーションキット登場!

美術館所蔵のポーランドの女性衣装の意匠を、アラン模様で表現したニットができました。メリノウール100%の毛糸で、ふだん使いできる特別な一枚を完成させてください。

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