コート・ダジュールで冬のヴァカンス / 恋するパリ通信

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南仏の地中海沿岸のコート・ダジュールは、標高3000メートル級の山々に囲まれユネスコの世界遺産にも登録されたニースをはじめ、ピカソ美術館があるアンティーブやレモンの街マントン、F1で有名でなモナコなど、海沿いを走る列車でいろいろな町に移動できるのが魅力。今回は番外編として、2025年が始まる冬のヴァカンスを過ごしたコート・ダジュールのお話をお届けしたいと思います。

ニースから電車で隣駅のVillefranche-sur-Mer(ヴィルフランシュ シュル メール)。ヒッチコックの映画の舞台になった街。ジャン・コクトーもwelcomeホテルに滞在して、漁師のために壁画を描いた教会が隣にある。

私にとって南仏は、冬に日本の撮影スタッフと一緒に春夏コレクションを撮影しに行く場所。南に行けばパリよりは冬でも太陽があるだろうと考える場所で、過酷な仕事先というイメージでした。しかし、去年の11月に撮影で南仏を訪れた際、太陽が降り注ぐ最高のコンディションで撮影ができ、しかも観光までできるという素晴らしい機会に恵まれたのです。そこで、ずっと行きたかったFondation Maeght(マーグ財団美術館)にとうとう行くことにしました。

左 :今まで行った美術館の中でトップ3に入るFondation Maeght。サン・ポール・ド・ヴァンスという村にある。 / 右:空間とアートを楽しめる素晴らしい展示。

この美術館はマグリットとエメ夫妻が設立し、近代美術と現代美術1万3千点をコレクションする私立美術館です。建築はル・コルビュジエの弟子でホセ・ルイ・セルトの手によるもの。サン・ポール・ド・ヴァンスの街からさらに山を登ってこの美術館が突如現れた時には、やっと来れた! とそれだけで感動しました。それまで「過酷な仕事先」というイメージだった南仏の地の印象がその時に一変、今度は年末年始に家族を連れてニースを案内したいと旅を計画するまでになったのです。

わが家の愛犬ボニーを連れて行くため列車の旅に。どこへでも一緒。

家族との今回の旅には愛犬ボニーも連れて行くことにしたので、いつもなら飛行機で行くところをパリのリヨン駅からニースまで列車で向かうことに。ニースでの滞在先は旧港エリア。

ニースのおすすめは旧港のエリア。アンティーク街もあり、地元の人たちでにぎわう。

撮影場所としてここは何度も訪れたことがあるのですが、観光客よりも地元の人に愛されているエリアなので気に入っていて、Airbnbでアパートを借りて滞在することにしました。

ニースの東にあるお城の上から街の絶景を眺められる。夜景がおすすめ。

毎日電車で海岸沿いの街に出かけ、散歩をし、疲れると太陽が降り注ぐカフェで休憩。食事はおしゃれなレストランというよりも、いつも地元の人でにぎわっているようなお店をチョイス。

左:アンティーブの街で食べた南仏一おいしいと言われているブイヤベース。その日仕入れられた魚が何種類も入っているのがぜいたく。 / 右: ニースに旅をするならぜひ行きたいニース料理店chez Davia。この日は新鮮なイワシのマリネが前菜にあった!

中でもこれまでに何度も訪れてきたchez Daviaは、地元の新鮮な素材を使ったニース料理が自慢の人気店。予約必須ですが、みなさんにもおすすめしたい名店です。

右・左:やっといけたマティス美術館。

今回の旅は完全なる観光なので、何度来ていても行けなかったマティス美術館とシャガール美術館にも行ってきました。マティス美術館には海と空という部屋があるのですが、この部屋に入った瞬間に有名なタぺストリーが目に飛び込み、心が震えて涙が出てきました。ここにはマティスがコレクションをしていたオブジェもあり、それもとても興味深かったです。

コート・ダジュールの海はマーク・ロスコの絵画のような美しい景色を、日替わりでさまざまに見られる。

次の日訪れたシャガール美術館では、色とりどりのシャガールの絵、ステンドガラスを見て感動。中でもほかとはまったく作風が違う『Les amoureux en vert』という婚約者のベラとの肖像画に惹かれてしまい、その前から動けなくなってしまいました。「ベラの知性の強さへの賞賛、まだ認められていない貧しい画家である自分を彼女が選んだことへの驚き、そしてふたりを引き寄せた肉欲的な衝動が、シャガールと若い女性を情熱的な愛で結びつけた」と説明文に書いてあり、この絵にまた魅せられ、ベラという女性に強く興味を惹かれました。心揺さぶられる作品に出会えることの素晴らしさをこの旅で改めて気づかされました。

左:電車で約40分、イタリアの国境まで遠足。市場は最高。イタリア食材が安く買え、アーティチョークとパルメザンチーズのサラダが量り売りで売っている。 / 右:ヴァカンス先でも蚤の市は絶対にチェック。この日はニースのサレヤ広場にて。

アンティーブには大好きなピカソ美術館が、モントンにはジャン・コクトーの美術館があります。このエリアにはプリミティブな芸術の神さまがいるからか、とてもいいバイブスがあります。それが海や山など自然からのパワーなのかはわかりませんが、大好きな蚤の市に行っても、とても惹かれる陶器や絵画が多いのです。この旅では、人生初の初日の出を見ました。

2025年、ニースで見た人生初の初日の出。

人もまばらな中(初日の出を拝むのは日本独特の文化なのかな?)ゆっくりと上がってくる太陽を見て、なんと力強く美しいのだろうと胸を打たれました。世界情勢が不安定な今ですが、こうやって小さな感動の駒をひとつずつ集めていこうと誓って2025年が始まったのでした。世界を行き来できるようになっているので、みなさんも感動の小さな駒を集める旅に出てはいかがでしょうか?

TAKANAKA MASAE
雑誌や広告でファッションコーディネーター&スタイリストとして活動中。
パリに住んではや20年、毎日自転車でパリの街をパトロールしています。
Instagram 移動花瓶屋さん @cabin.e.dream

パリの日常 @massaetakanaka

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