前回に引き続き、刺しゅう作家マカベアリスさんのインタビューの2回目。今回はマカベさんの作品に影響を与えたイスラエルでの体験や作品づくりのこだわりについてお話いただきます。
植物をモチーフにするようになったきっかけ
縁あって、語学を学びに約一年間イスラエルを旅したマカベさん。「世界のすべてのものに意味があるんだなあとイスラエルで感じて。自分の内面が変わったのか、この世の多種多様な形のものたちが、すべて意味があるような……。」帰国後は、アスファルトの草木でさえも「ありがとう、ありがとう」と言っているようで、これまで以上に植物などが美しく見えてきたのだそうです。そこから植物を刺しゅうのモチーフにするようになり、不思議と仕事の幅も広がっていったそうです。
散歩で撮った植物をスケッチで描く
枠いっぱいに植物の生命エネルギーを感じるマカベさんの刺しゅう。図案はどうやって作っているのでしょうか。
「散歩がてらに近所をぶらぶらしながら、気になる草花を写真に撮っています。その写真や時には図鑑なども参考にしながら、雑記帳に青いボールペンでスケッチをしたものがこれです」と見せてくれたのが、そのまま飾っても絵になる、ため息もののスケッチ帳。
スケッチをすると「葉っぱのつき方はこうなっているんだ」など、目で見るだけでは得られない発見があるのだそうです。スケッチのあと、刺しゅう用の図案を描き始めます。この時に、どのステッチを使うのかをイメージしながら図案に起こしていくそう。ちなみに図案は何度も直すので、インクを消せるボールペンがよいそうです。
ファンを魅了するマカベさんの図案と色遣い
枠いっぱいに草花のエネルギーが調和し、息づいているのがマカベさんの作品の魅力。マカベさんが刺しゅうで心がけているのは、草花が生き生き見えるようにすることだそう。また、絶妙なニュアンスカラーの色遣いがファンの心をつかんでいることについては、「写実的にそのものをその色で表現するのではおもしろくないなと思って」とのことです。
そのセンスはどう培ったのでしょう? 美大出身の友人から「好きな作品をみつけたら、その作品はどんな色で構成されているのか分解してみる」ということを教えてもらったそう。「例えば、色に魅かれているなと思った作品を前にして色をひとつひとつ書き出してみるんです。そうすると、『私はピンクとベージュと黄緑の色合わせが好みなんだな』と気づけますよね」と。そしてその色を刺しゅう糸に置き換えてみるのだそうです。
また、ふだんから参考にしているという、イギリスの画家、エドワード・ボーデンの画集がお気に入り。自分で思いもつかない色合わせをこの画集から気づかされたり、紫と赤とからし色が合わさるとこんな雰囲気になるんだと、色合わせから生まれる雰囲気までわかるのでとても勉強になるそうです。〈次回につづく〉
次回は、マカベさんの刺しゅうに対する思いや手づくりの魅力についてお話しいただきます。
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