2年続けて著書が出版され、NHKのテレビ番組「すてきにハンドメイド」にもご出演。現在も新しい本を制作中の刺しゅう作家・マカベ アリスさん。やさしく洗練された雰囲気、生命力にあふれた植物モチーフの刺しゅうは、年代を問わず人気でファンが急増中です。そんな状況にも「あまり実感がないんです。毎日このアトリエにこもってひたすら刺しゅうをしているので」と、静かに微笑むたたずまいが印象的なマカベさんに、刺しゅうと手仕事の魅力についておうかがいしました。3回シリーズでお届けします。
3人の子育てをしながら独学
結婚後は専業主婦だったマカベさん。幼いころから手芸は好きでしたが、本格的にはまったのは長女が生まれてからだそう。子ども服を作ってみて、自分が洋裁好きであることに気づいたそうです。とはいえ、小さな子どもがいる母親の洋裁タイムは、家族が眠るわずかな時間のみ。毎日分刻みで時間を捻出し、“マグマのように” 湧き上がる創作の衝動を手芸で消化していたとか。そのうち家族やまわりの人に喜んでもらうだけではもの足りず、文化服装学院のオープンカレッジに通うことに。ちょうど3人目のお子さんが幼稚園に入った頃でした。
洋裁から刺しゅうの世界へ
「当時はとにかく洋裁を仕事にしたいという思いが強くて。でも具体的に何がいいか自分でもわからず、まずはパターンの製作を学びに行ったんです。けれど、早々に向いていないと気づきました。からだのラインに合わせるために、正確であることが求められる計算が苦手で……。趣味で服づくりをするにはよいけれど仕事にはできないと思い、そこからまた模索の日々に逆戻りです」。
そんな時ふと、長女が小さかった頃にうさぎの刺しゅうをした記憶が蘇ってきたそうです。「刺しゅうは、自分が思い描いたものを形にできることに気づいたんです。色とか形とか、すべてを自分で決められる楽しさにはまりました」。
運命のイスラエル旅行
作品を出品できるサイトに投稿しながら、展示会からも声がかかるようになったのは、8年ほど前のこと。当時は革靴や黒電話など、その時々で自分の心に引っかかったモチーフを刺しゅうしていたマカベさん。その理由は「お花や植物はありふれているし、みんなと同じことをやりたくなかったから」だそう。そんなマカベさんの作品が大きく変わったきっかけは、2014年のイスラエル旅行でした。〈次回につづく〉
次回は、マカベさんのイスラエルでの体験や作品へのこだわりについてお話いただきます。
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