ニューヨーク散歩〜Calvin Leeのニット〜

2023年9月26日(火曜日)

みなさんは、最近ニューヨークの地下鉄で話題になっているかぎ針編みアーティストをご存知でしょうか。独特な配色のグランマ・スタイルでカーディガンを編む男性、Calvin Lee(カルヴィン・リー)さん。NYのメンズウェア界に新風を送り込むだけでなく、生粋のニューヨーカーとしてアートを通じた社会貢献の意識を強くもつ彼は、TikTokを通してたくさんの若い人たちに影響を与えています。なんと今回、幸運にもインタビューの機会を得ることができ、彼の魅力を日本のみなさまにお届けできることになりました!

 

きれいなシルエットとカラーリングで彼のニットは人気。

小学校の先生がお昼休みに編み物をしているのを見て、糸と針だけで何でも作れる、というミニマルさに魅了されたというCalvin Leeさん 。その先生に編み物を教えてもらい、その後は独学で技術を磨いてきたとのこと。公園や地下鉄などNYのあらゆる場所で編み物をする様子が周囲からの注目を集め、NYの編み物好きで知らない人はいないとまで言われる存在になりました。

 

NYの街中を歩きながら編むCalvinさん。四六時中編み続けている。

NYではコロナ禍で編み物が再ブームとなり、Corridor(コリドー)やNN07(ノーナショナリティ)、Celine(セリーヌ)といったブランドのかぎ針編みニットも注目を集めています。ゆったりしたシルエットのニットが多い中、Calvinさんの作品はフィット感があり、カラーバリエーションが豊富で、ボマージャケットのような雰囲気を持っていることが特徴でしょうか。衿や袖口など、細部にまでこだわりが見え、男性だけでなく女性が身につけたくなるポイントもしっかりおさえられています。「私のカーディガンはグラニー・スクエアだけど、色の配置にこまかく変化をつけて、すべてのスクエアが違う色合いになるようにしているんだ」と彼は語ります。

 

斬新でファッション性の高いデザインで注目されるCalvinさんですが、TikTokで37万人のフォロワーをもつに至った彼の最大の魅力は、NYのアーティストらしい、社会的な視点。NYに住む無数のアーティストたちと日々交流をしている僕ですが、いつも驚かされるのは彼らの社会問題へ強い関心。自分の作品を通してどのように人々にインパクトを与えられるのか、それぞれが明確な指針をもち、その思いに賛同した人がファンになっていきます。

 

NYの編み物好きの中でCalvinさんのことを知らない人はいない。NYの地下鉄や公園、どんなところでも編むのが彼のスタイル。

Calvinさんの場合は、特にコロナ禍にホームレスの方々のために帽子を作ったプロジェクトが注目を集めました。NYの厳しい寒さを乗り越えられるよう、二重構造にして保温力を高めた帽子100個を、数週間かけてひとりで編み上げ、自ら配り歩いたCalvinさん。「ただホームレスの方々にあたたまってほしかっただけ」と謙遜しますが、この活動が、SNSを通して多くの若者たちの意識に影響を与えることになります。「編み物はお年寄りや女性の趣味だと思われがちで、私のような若い男性が編み物をすることは少ないかもしれません。でも、編み物は年齢や性別に関係なく誰でも楽しむことができますし、同時にそれが単なる趣味ということを超えて自己表現のひとつにもなります。それが時にほかの人を助け、社会に貢献する力を持っていることを、私のTikTokから感じてもらえることを願っています」とCalvinさんは言います。

 

左:100個の帽子プロジェクト。みずからホームレスの方々に完成した帽子を手渡していった。/右:かぎ針編みで木をデコレートするストリートアートも。

せっかくの機会なので、Calvinさんが今思い描いているゴールについて尋ねてみると「私の目指すところは、編み物でアートの壁画を作り、コミュニティーに貢献すること」だそう。どんなメッセージが込めれた壁画になるのか、またその作品にふれた人たちにどのような影響を与えるのか、今から楽しみで仕方がありません。

 

左:親戚の男の子へのプレゼント。/ 右: お父さんのために作った、サンゴ礁の作品。

最後に、編み物をする日本のみなさまに、Calvinさんからメッセージをいただきました。「自分の感覚に自信をもち、恥ずかしがらずに作品をどんどん人に見てもらうことが大切です。家の中だけでなく、あらゆるところで編み物を楽しんでください!」 

 

メリークリスマス!を帽子で表現。

 

編み物を通して新しい価値観や視点を提示する彼の姿勢に影響を受け、趣味やパッションを活用する可能性について考え直す機会にもなった今回のインタビュー。「まったくのど素人で、趣味レベルのものを人になんか見せられない」なんて思っていた僕のプラモデルで、もしかしたら人を喜ばせることができるのかも……!? なんて思い始めています。

池澤 崇

「好きなこと以外はやらない」というポリシーのもと、自由の国アメリカ・NYで日本文化スペースRESOBOXを運営中。趣味は登山と居合道とバイオリン。NYに住む日本男児3人でポッドキャスト「オールナイトニューヨーク」も配信中。ぜひ聴いてみてください。https://www.resobox.com/

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