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東北だより

渡邉 亮さん、高橋 智美さん、小野寺 唯美さんの東北だより 作家として迷いに迷い、制作へ。今は続けていてよかったと思います。

第三話 全3回
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取材:板元 義和(シュープレス

地震で揺れたとき、まず最初に作品をおさえた。

○3.11の震災の時はみなさんどちらに?

(渡邉)ぼくはちょうどアトリエで火を使う作業をしていました。800℃くらいに達するいちばん窯の温度が熱い時で、逃げるかどうか迷ったけど、火事になるといけないと思い、結局揺れがおさまるまで窯をおさえていました。

(小野寺)アトリエを兼ねた店にいて、まずは作家さんからお預かりしている作品を守らなくちゃって、おさえていましたね。作家さんたちにあとから話をしたら「そんな時は逃げて!」って逆にお願いされました。あと、自分のビーズがたくさん散らばってしまって、それをひと粒ひと粒拾うのが大変でした。

(高橋)店にいる時で、携帯電話の緊急地震速報が鳴って、ハッとしたらすぐに揺れが来ました。とりあえず店内の商品の器をおさえて、しばらくそうしていて、外を見たらみんな逃げている。そこで「私も逃げなくちゃ」って、やっと外に出ました。

(渡邉)そう、まず作品おさえるよね、その気持ちすごくわかる。ぼくは窯をおさえていたから、作品をおさえたくてもおさえられなかった。ガラスなんかが結構めちゃくちゃになりました。

(小野寺)アトリエがぐちゃぐちゃになり過ぎて、震災後もしばらくは片づける気になれなかったなあ。正直、どうしていいかわからなくて。そんな時、様子を見に来てくれた友人がいて、片づけを手伝ってくれた。ありがたいな、っていう思いと同時に、やっと片づけが始まりました。

渡邉 亮さん、高橋 智美さん、小野寺 唯美さんの東北だより

○震災後、制作再開までは時間がかかりましたか?

(小野寺)2~3週間たってからですかね。それまでは身の回りのことに追われていた気がします。ただ、イベントなどの仕事が中止や延期になった、という話が多くなって、危機感はすごく感じていました。

(渡邉)震災直後、こうした時期に作品を制作していていいものかどうか、すごく悩んでいました。ただ、4月に仙台パルコでのイベントを控えていて、そのイベントがどうなってしまうのか、不安でしたね。実際、大きなイベントがなくなってしまうと、そこへ向けて制作していた多くのアーティストたちの生計が苦しくなるんです。震災だから中止、というふうにいかない部分もあるんですよ。

(高橋)パルコのイベントは私も参加メンバーのひとりだったんですけど、開催するのかしないのか、正直どうしていいのか自分でもよくわからなかったので、結局メンバー全員の多数決による「開催する」という判断に従い、一緒にやりました。でもやってよかったな、と思いました。

(小野寺)私は、参加していなかったんですが、お客さんとしてイベントに行ってみたんですね。その時「ああ、やってるんだ」って思って、同じアーティストとしてすごく勇気づけられたのを覚えています。自分もがんばろうってその時思いました。

渡邉 亮さん、高橋 智美さん、小野寺 唯美さんの東北だより小野寺さんのアトリエにあるアイロンビーズ。

フェリシモとの商品企画が、正直すごくうれしかった。

○それぞれの立場でいろいろな葛藤があったようですね?

(渡邉)あったと思いますよ。でもパルコでのイベントがそれなりにうまくいって、少しずつやる気になっていた時期に、石巻のお客さんがぼくに話してくれたのは「津波で家が流されてしまい、その自宅あとを探していたら、渡邉さんの指輪が出てきた。大切な思い出の品だったんで、とてもうれしかったんです」というようなことをね。それを聞いた時、よくわからないんですけど、アクセサリー作りをしていてよかったな、というのとこれからもがんばらなくちゃ、っていうのを強く感じましたね。

(高橋)そんないい話、初めて聞きました(笑)。

(小野寺)私も!

渡邉 亮さん、高橋 智美さん、小野寺 唯美さんの東北だより

○フェリシモとの商品企画の話を聞いた時、どんなふうに思いました?

(渡邉)正直、自分ひとりで被災地支援とか、なかなかむずかしい。そんな時にフェリシモさんから今回の話をいただいた。参加できて本当にうれしかったです。自分の仕事が被災地の支援につながっていく……しかも多くの人の力がそこには加わるわけで、意義深いことですよね。

(小野寺)私は純粋にうれしかったのと「すごいチャンス、やれることは全部やろう」って素直に思いました。でも実際形になった商品サンプルを見て、自分だけの発想ではこうはならなかっただろうな、というのを感じました。参加できてうれしかったです。勉強にもなりました。

(高橋)私は、フェリシモさんが、東北のこれからにつながるようなプロジェクトをしているのを知って、すごく共感を覚えて、そういう企業から商品企画の話をもらって、とにかくうれしかったですね。ちょっとでもお役に立てたら、そんな気持ちでした。

(渡邉)フェリシモさんと一緒にものづくりができる作家としての喜び、それと同時に東北の役に立てる仙台人としての喜び、こうしたやりがいのある仕事の機会というのはなかなかないと思います。

渡邉 亮さん、高橋 智美さん、小野寺 唯美さんの東北だよりthuthu・渡邉さんのアクセサリーはyutorico.さんでも取り扱っている。

七夕まつりで身に着けてくれた人を見たら泣いちゃうかも(笑)。

○震災前と震災後、変わられたことってありますか?

(渡邉)震災直後、正直、自分の作るものって世の中の役に立つんだろうか、みたいな不信感というか、投げやりな気持ちになったこともあったんです。例えばお菓子でもなんでも、食べものが作れれば、あの時は世の中の役に立てた。ぼくの作るアクセサリーでは、誰もおなかは満たされないですしね。でも、そうじゃないんだろな、というのが震災から時間が経って少しずつわかってきたんです。いや、はっきりとはわかっていないんですけど、でも、フェリシモさんのお話をいただいた時「ああ、これだ」みたいな感覚になったんです。ぼくの作ったアクセサリーを大切な思い出として持ってくれている人がいたら、それはすばらしいことだし、それがさらに地元の支援につながるのならこれ以上うれしいことはない。

(高橋)私も店を再開する時、店を開けている場合なのか? なんて思ってしまいました。仙台の場合、沿岸部の津波が来たところと、そうでないところで被害が全然違う。だからなのか、どこかでいろいろと考えてしまう。私は母の実家が石巻で、震災直後、ずっと連絡が取れず母がかなり動揺してしまって……。そんな状況の時だったので、なおさら店の再開は悩みました。でも店を開けて、震災前とあえて同じようにしてふだん通りを心がけて営業したんです。そうしたら、お客さんも前と変わらずやっているんだって、普通に入ってきてくださって。私自身の日常を取り戻すという意味でも、開けてよかったです。

渡邉 亮さん、高橋 智美さん、小野寺 唯美さんの東北だよりインタビューはyutorico.さんの店内で行われた。

○フェリシモで販売される商品を購入されるお客さまへ何かメッセージを。

(小野寺)8月の6~8日に仙台七夕まつりがあります。お祭りの時に使ってくれている人を見たら、私うれしくて泣いちゃうかもしれません(笑)。自分の大好きな七夕まつりが、こういう形になったのは、本当にうれしいので、ぜひ手にとっていただきたいですね。

仙台の七夕祭り 揺らめく吹き流し バッグになるふろしきと持ち手のセット 
仙台の七夕祭り 揺らめく吹き流し バッグになるふろしきと持ち手のセット
1セット ¥1,800(税込み価格)

(渡邉)ぼくのイヤリングは、七夕飾りに欠かせない吹き流しを付けています。8月の仙台七夕まつりにこれを着けて仙台に来てくれれば最高です。ぼくも泣きます(笑)。

仙台の七夕祭り ほうき星のような吹き流しツーウェイピアスの会 
仙台の七夕祭り ほうき星のような吹き流しツーウェイピアスの会
月1セット ¥2,000(税込み価格)

(高橋)私の店のロゴマークは鳥の形、なので作品のデザインには自分が好きな鳥を取り入れることが多く、今回のデザインでも「しあわせを運んでくれる鳥」をモチーフにして作っています。これを購入してくださった方が、ちょっと何かいいことがあったとき、いいことに巡りあったとき、この商品のことを思い出してくれたらいいなって思います。いいことって、すごく大切にしなくちゃいけないって、震災後、特に感じています。

yutorico.×夢工房 しあわせを運ぶ 小鳥のピアス/イヤリング 
yutorico.×夢工房 しあわせを運ぶ 小鳥のピアス/イヤリング
1セット ¥2,100(税込み価格)
yutorico.×夢工房 しあわせを運ぶ 小鳥のネックレス 
yutorico.×夢工房 しあわせを運ぶ 小鳥のネックレス
1セット ¥2,400(税込み価格

(インタビュー後の感想)

雑貨やアクセサリー、アイロンビーズなど、個性的な作家活動を仙台で続ける3人。しかし、今回の震災のショックは大きく、それぞれの活動にも影響していました。しかし下を向いてばかりはいられない、彼らのそんな熱い思いが、フェリシモで発売されるオリジナル商品に結実しているのかもしれません。

渡邉 亮さん(宮城県仙台市出身)

渡邉 亮さん(宮城県仙台市出身)
アクセサリーデザイン、アクセサリー制作を中心に仙台で活動。インテリアコーディネイターを経て、自身のブランド「thuthu(チュチュ)」を立ち上げ、現在に至る。

高橋 智美さん(宮城県柴田町出身)

高橋 智美さん(宮城県柴田町出身)
「雑貨・手紙用品店yutorico.(ユトリコ)」の店主。自らデザインした紙雑貨、判子の制作も行っている。

小野寺 唯美さん(宮城県仙台市出身)

小野寺 唯美さん(宮城県仙台市出身)
玩具店でアイロンビーズで出会い、アイロンビーズ作家の道へ。現在、市内で「Iron Beads Galaxy」という名のアイロンビーズ教室謙店舗を営む。イベントや学校等のワークショップ講師としても活動中。