フェリシモCompany

バックパッカー旅の経験が、いま「サステナブル」「エシカル」につながって。

環境を意識して仕事を工夫している社員にスポットを当てたインタビューリレー。
第4回目は、フェリシモのファッションブランド「イディット」の企画チームリーダー若杉顕子さんにお話を伺いました。

若杉さん画像

以下事務局:環境コミュニケーション事務局)

事務局)入社はいつですか?

若杉さん)2004年です。入社してすぐに「イディット」に配属されました。途中、産休・育休を経て、約17年フェリシモで働いています。

事務局)前職では、どんな仕事をしていたんですか?

若杉さん)20代のころ、自分でインディーズブランドを作ってやっていたんですけど、「どこかに勤めてみたいな」と思い始めて、大阪の会社で子ども服やレディースウェアのデザインをしたり、パタンナーとして働いていました。仕事はおもしろかったのですが、度重なる中国出張や終電続きなど、かなり激務でした。そんなとき友人からフェリシモを勧められて調べてみたところ、ファッションブランドが多数あり、その商品企画としての募集があったこと、そして仕事とプライベートを両立できそうな会社だなという印象があり受けてみたんです。

事務局)なんと、ご自身でブランドを!その後もいろいろな仕事をされてたんですね。配属後、イディットチームではどんな仕事を?

若杉さん)今はブランドとして独立している「リブ イン コンフォート」も、まだイディットカタログの1ブランドだったころです。ほかにもいろんなブランドがたくさんありました。私が最初に担当したのが「神戸ベラドンナスタイル」という神戸のきれいめファッションブランドでした。しばらくの間フェミニン系のブランドを担当していたのですが、その後「ブルーブラックプラネット(B.B.P.)」を担当することなりました。

事務局)若杉さんは「B.B.P.」の印象が強いので、フェミニン系のブランドを担当されていたとは知りませんでした。そのころ、環境問題に関心や興味がありましたか?

若杉さん)「B.B.P.(ブルーブラックプラネット)」というブランド名の中に、「プラネット」というワードが入っていることから「地球」などにも連想が広がって、このブランドの中に、環境に配慮した商品があっても文脈に合うなと思い、意識的にトライしているところはありましたね。「レンプール」という植物由来の環境に配慮された素材を使ったり、ナチュラルダイ®(フードロスにつながる野菜を原料にした日本の染料)で染めた商品を作ったり、レジかごバッグなども作ったりしました。一方、ジレンマもありました。私自身「ともにしあわせになるしあわせ」というフェリシモの理念や、社会貢献、環境配慮などに共感したのも入社のきっかけだったので、もっと取り組みたいと思うものの、業務を行う中では、なかなかそこまで気にしていられないというのが実情でした。

カタログの写真

当時すでに「f.e.a.ネガティブチェックリスト」というフェリシモにおける商品企画の環境ガイドラインがありましたが、その基準に適合しているかどうかは、ほとんどサプライヤーさんまかせでしたし、生産現場、たとえば中国の現状などについても同様で「本当にちゃんとできているのかな?」という疑問もありました。同時に、「フェリシモのファッションは、ほかのブランドとは違うサステナブルな視点がもっとあってもいいんじゃないか?」とも思い始めていました。

事務局)そんなとき、何か大きな転機があったのですか?

若杉さん)はい、一番強く感じたのが、2013年に「ラナプラザ」という、欧米の衣料品ブランドを対象とする縫製工場が入ったバングラデシュのビルが崩落して、多くの犠牲者が出たんですね。そのニュースは欧米ではかなり影響がありました。その後、ドキュメンタリー映画『ザ・トゥルー・コスト(THE TRUE COST)』で、ファストファッションへのバッシングが強まったりして、一気に世界的なサステナブルの波が高まったのですが、日本はほとんど無関心状態でした。そのときに、欧米と日本の違いを強く感じました。

その事故以降、ZARAやH&Mなど、ファッション業界はサステナブルの方向性に舵を切り、ファーストリテイリングなども追随して、遅まきながら日本でも大きな流れになったと記憶しています。その一連のムーブメントを見ながら「この流れは今後もっと大きく普遍的になる」と思い、チーム内で商品企画のアイデアなども出し合いました。

企画風景

一方、一般的な消費者視点で考えると、サステナブルなんていうワードはまだまだ認知されておらず、情報もほとんどありませんでした。サプライヤーさんに話してみてもそんなに響かず、サステナブルな素材や商材自体もそんなになくて、模索状態が続きました。でも数年で状況は変わり、今ではサステナブルな商品作りと価値が世の中から認められ、また、求められるようになったと感じています。

事務局)なるほど。想いはあっても、実現するまでには少し時間がかかったのですね。では次に、具体的な商品企画についてお聞かせください。

若杉さん)そうですね、長く続けているのは、COTTON USA ™を使った商品ですね。

カリフォルニアコットンの画像

コットンUSAを使い始めたきっかけはメーカーさんからの提案だったんですが、実は最初のころは「サステナブル」だから使っていた、というわけではなかったんです。「上質なカリフォルニアコットンが、これまで使用していたコットンと同価格で使えます」という提案があり「それなら使ってみよう!」という感じだったんです。その商品は結構売れて、ロングラン商品になるんですが、あくまでも「高品質なコットン」がアピールポイントでした。でも2~3年前からかな、コットンUSAが「サステナビリティ」を全面に打ち出すようになったんです。

みなさんもご存じのように、綿花栽培は、社会的・環境的に重要な影響があるのですが、コットンUSAは、以前から生産背景や品質に対する数値目標をはっきり決めて生産に取り組んでいました。その生産姿勢に対して品質への信頼性が生まれ、質のよいコットンブランドになったのですが、実はサステナビリティの指標としても有効であるとみなされたことで、より信頼度が高くなったようです。

事務局)数字を含む情報開示という点も、サステナブルなモノづくりに欠かせなさそうですね。

若杉さん)そうですね。今、何が本当に環境にいいのかわかりにくいものも世の中には多いので、コットンUSAのように、数値化された素材は誰に対しても明白で商品企画に取り入れやすく、お客さまにもお伝えしやすいなと思っています。

事務局)ありがとうございます。では、別の商品のお話もお聞かせください。

若杉さん)インドの職人たちが作るエシカルなアクセサリーがあります。

インドの職人たちが作るエシカルな刺しゅうアクセサリー

刺しゅうアクセサリー画像

インドの職人たちが作るエシカルなリング

リング画像

知ったきっかけは、インドのある村の刺しゅうの技術を生かしてアクセサリーを作り、村の収入にするプロジェクトを行っているアクセサリー屋さんがあるという『繊研新聞』の記事でした。そのアクセサリー屋さんが大阪の会社だったので、一緒に何かできないかなと思って問い合わせたところ、すでにフェリシモとのお取り引きのあるメーカ―さまでした。お話を聞いてみたところ「インドの村の生活向上や女性の地位向上などを重点的に考えて作っている商品もあります。イディットで一緒にオリジナルが作れたらいいですね」という話に発展して、実現しました。この指輪もそうなんです。

若杉さんの指先写真

事務局)天然石のリングと細いリング、どちらも素敵です。

こういう商品を作るとき、他の商品と何か気持ち的に違ったりしますか?

若杉さん)私自身が、若いころにバックパッカーで東南アジアとかインドとか、よく旅行していたので。発展途上国の現地の人々とのふれあいが印象的で、ずっと影響を受けているところがあります。

このアクセサリーのように、ひとつひとつの商品が、もしかしたら現地の暮らしや人々の役に立ってくれているかもしれない…と思うだけなんですけど、やっぱり何か違う気がします。

事務局)最後にもうひとつ、象徴的な商品があるとお聞きしました。

若杉さん)羊を傷つけずに採ったウールニットの企画ですね。

OTAGO(オタゴ)ウールニット

ご存じのとおり、オーストラリアやニュージーランドで採れるウールって上質なんですけど、衛生的かつ効率的に収穫量を増やすために、羊たちは「ミュールジング」っていう、ちょっと目をそむけたくなるような処置を受けているんです。「動物虐待にあたるのではないか?」という抗議もされています。ただその処置は、羊にとって衛生的に必要なこととして認知されており、飼い主自身、悪いことをしているという意識もなかったりするんです。
長年そうして羊を飼ってきた人たちに、何が正しいとか、動物虐待だとか、私たちが言えることではないのですが、ただ、その事実が衝撃的だったので、できれば羊たちを傷つけずに採れたウールを使った商品が作れたらいいなとは思っていました。

そんなときに、ある原毛屋さんと知り合うことができました。そこは「ノンミュールジング」のウールも扱っていました。そして、ニュージーランドが、2018年以降、ミュールジングを禁止していることを知りました。そこで「ニュージーランドのノンミュールジングのウールで作ったニット」が生まれました。ただ「商品価値としてはまだ少し弱いな」とも思っていました。そこで思いついたのが、「この商品を長く使ってほしい」という想いを込めて、その商品と同じ毛糸を小さな糸巻きに巻いて、商品と一緒にお届けするというアイデアです。

糸巻き画像

「引っ掛けたり、虫食いになったとしても、この糸で繕って長く使ってくださいね」というメッセージです。またサイズ展開も「レディース」というくくりを外して、ユニセックスで、よければシェアして着てね、という提案もしています。夫婦で、親子で、長くていねいに着続けてほしいと思っています。100%ウールなので、どうしても価格が高くなるのですが、2019年に販売したところ好評で、2020年の冬も販売しました。

ユニセックス画像

事務局)そういう話を聞くと、買いたくなりますね。で、実際に買いました。大切に着ます~!これから取り組みたいことはありますか?

若杉さん)今は、単発でやることで精いっぱいなんですが、本当はもっと川上から、環境への配慮とか労働環境への配慮などに取り組んでいきたいと思っています。川上の生産背景が変わっていけば、川下で作られる商品が自然とサステナブル&エシカルになっていくと思うので。ただ、生産者や生産現場を後押しする公的な規制や援助などがないと正直むずかしいことでもあります。でも、世の中の多くの消費者が「サステナブルでエシカルなものを持ちたい!」というムーブメントを起こすことも、公的なサポートなどを生み出すきっかけになるのではないかとも思っています。

事務局)プライベートで気にしていることはありますか?

若杉さん)今、子どもが3年生なんですけど、同年代の子どもたちの児童労働や女性蔑視などが、繊維の業界でも問題になっています。子どもを持ったからこそ、余計に気になり、想像してしまうのかもしれません。それもあって、今は環境の側面はもちろん、エシカルな側面、つまり、女性や子どもといった弱者に対する環境の改善などに、より関心があります。地球環境への配慮はもちろん大切ですが、人の英知や行動だけではどうにもならない部分もありますよね。でも、弱者への配慮については、自分たち人間内で解決できるはず。「人のことは人がなんとかしないと」と思ってます。

インドの女性

イディットには、「女性をハッピーにしたい!」という想いがベースにあって、そことも通じるところがあるので、チームの中でも、女性支援や社会貢献に関する何かができないか?という点も含めた企画をして、お客さまも巻き込んで取り組んでいきたいです。

事務局より)取材を終えて……

ファッション分野で取り組む「サステナブル」や「エシカル」。そのむずかしさや課題をどのように乗り超えて「買っていただける商品」に昇華させるか。ワクワクしながらお話をお聞きしました。若いころのバックパッカーの経験が今の商品企画に生きているなんて、なんて素敵なことなんだろう!とも。

数値的なエビデンスは確かに指標としてクリアですし、説得力もありますが、それだけでなく、こういう想いが根底にあるからこそ、どこかの誰かと自分のつながりを感じるような価値や魅力を持った商品たちが続々生まれていることを実感したインタビューでした。


この記事を読んで、「イディット」が気になってきた!という方はぜひこちらからどうぞ。

iedit画像

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